離婚の法律知識
財産分与とは
離婚の際、慰謝料より問題になるのが財産分与です。
夫婦は共同生活をしている間にお互いの協力によって、一定の財産(不動産、株券や国債などの有価証券、貯蓄、自動車etc)を形成しますが、多くの場合は、夫名義の財産とされています。
しかし、たとえ夫が働いて得た賃金から不動産を購入し、名義は夫となっていても、実質は妻の協力貢献によって形成維持されたものですから、名義は夫でも夫婦の共有財産になります。
離婚の方法を問わず、法律で正当に認められた権利で、どちらに離婚原因があろうかなかろうか、原則として公平に分与されます。
但し、離婚原因を作った側の財産分与が慰謝料として差し引かれて、少なくなるケースもあります。
また財産分与には、経済的に弱い立場に配偶者が、離婚後の生活に困らないようにするという扶養目的も含まれています。
例えば、離婚時に妻が高齢な専業主婦だった場合や、一方が病気などを患って自活能力を持たないものに対しては、毎月数万円の生活費を支払い、生活維持を図るというようなことです。
通常、不法行為(不貞行為、悪意の遺棄、暴力などの有責行為)に対する慰謝料は、財産分与とは別個の権利ですが、現実の財産分与の支払いは、慰謝料と明確に区別せず、合算する場合もあり、財産分与は慰謝料の性格も持つ事もあります。
だからといって、常に財産分与に慰謝料が含まれているわけではありません。
財産分与に慰謝料が含まれているのかどうかは、離婚協議書にきちんと明記しておきましょう。
婚姻中の財産
財産分与を考えるとき夫婦の財産を、以下の3つに分類します。
- ■共有財産
- 婚姻中に夫婦の共同名義で購入し共有している財産や、共同生活に必要な家具や家財など。
また夫婦のどちらのものか判断できない財産は、共有財産と推定されています。 - ■実質的共有財産
- 婚姻中に夫婦が協力して取得した財産で、名義が夫婦のどちらかになっているもの。
例えば、名義は夫の名義となっている財産でも、その財産形成に妻が貢献していれば、実質的には夫婦の共有の財産となります。 - ■特有財産
- 結婚前に夫婦各自が所有していた財産や、婚姻中に夫婦のいずれかが相続や贈与等で得た自己名義の財産。
社会通念上、各自の持ち物と考えられる装身具など。 - 但し特有財産でも、夫婦の一方が他方の特有財産の形成維持、増加に貢献していれば、寄与度の割合に応じて財産分与の対象とされる場合もあります。
また、夫が結婚前から所有していた不動産は、夫の「特有財産」ですが、婚姻中にその不動産の価値が上昇した場合、その上昇した価値分は「共有財産」となることもあります。
「特有財産」は原則として財産分与の対象にはなりません。
分与の対象となる財産とならない財産
上記で述べた通り、夫婦の全ての財産が財産分与の対象になるわけではありません。
具体的に何が財産分与の対象となるか、何がならないか具体的な例を挙げてみます。
- ■対象となる財産
- 名義が夫婦の一方になっていても、その財産の形成維持に夫婦双方が貢献している場合は、財産分与の対象となります。
- 土地や住宅などの不動産
- 家具などの家財道具
- 自動車
- 銀行預金や、貯蓄性のある生命保険
- 株券、国債などの有価証券
- ゴルフ場などの高額な会員権
- 退職金
- ※既に退職金が受領済みであれば財産分与の対象となります。
但し、結婚前からの勤務期間分は対象から外されます。
また、近い将来支給されるものについては、勤務先の経営状況などで、退職金の金額に不確定要素がある場合が多いので、確実に退職金が支給されることが立証されなければ、財産分与の算定の際に考慮に入れる事が難しいでしょう。
立証されれば、退職金が支給された時点で分与されます。 - 借金(債務)
- ※家事に必要な生活費や家賃の支払いなど、夫婦が共同生活をしていく上で生じた借金は、夫婦共同の財産分与の対象となり、連帯して支払う義務が生じてきます。
しかし、夫婦の一方が自分のために個人的に借りた借金は、清算の対象にはなりません。
但し、その借金の連帯保証人になっていた場合は、支払わなければいけません。 - ■対象とならない財産
- 結婚前からそれぞれが有していた財産
- 婚姻中に相続した遺産
- 夫婦の一方が単独で使用している装飾品
- その他、夫婦の協力によって得た財産以外のもの
- 離婚をする前に対象となる財産と、対象にならない財産を確認して、対象となる財産の関係書類等(下記リスト参照 不動産書類、通帳や印鑑等)を確保しておきましょう。
また日頃から家計簿を付けておくのも良いと思われます。 - 不動産登記簿謄本
- 銀行預金通帳
- 生命保険契約書
- 自動車の車検証
- その他の有価証券
不動産での財産分与
財産分与で問題になるのは、ローンが残っている不動産です。
財産分与の対象となるのは、不動産の時価から分与時のローン残債を差し引いた残りの金額となります。
- 例)不動産の時価が3000万円で、ローンの残債が1000万円残っていた場合
- 3000万円から1000万円を差し引いた2000万円が財産分与の対象となり、
2000万円を夫婦で分与することになります。
不動産を売却処分して、その代金を分与するのが、一番スッキリして理想的ですが、売却すると税金もかかり、ローンが残っている不動産を売却するとなれば、その後の返済も大変です。また債権者である金融機関の同意も必要となります。
そこで、不動産自体を分けるのではなく、その不動産を金銭に見積もり、不動産を譲り受ける側が、相手方に金銭を支払って解決するケースが多いようです。
不動産の価値の算定方法は、市町村役場で取得できる「固定資産税の評価」などがありますが、金銭的に余裕があれば、不動産鑑定士に依頼するのも良いでしょう。
また、不動産を譲り受ける側が、名義変更をする場合には、必ず不動産の権利変動を登記してください。
そうしないと完全な権利変動にはなりません。
名義変更の手続きにも費用がかかりますので、この登記費用をどちらが負担するか取り決めをした方がよいでしょう。
借地上の建物を財産分与する場合では、借地権の譲渡を伴うので地主の了解も必要となります。
財産分与の算定
財産の分与は、基本には夫婦の話し合いで取り決めます。
分与の算定基準は、夫婦が共有財産形成にどれだけ貢献したか寄与度によって割合を決めていきます。
家庭裁判所でも婚姻期間別の統計資料がありますが、あくまでも目安であり、夫婦の年齢、婚姻年数、資産、職業、その他個別的な事情などにより財産分与の割合を取り決めていきます。
金銭的な寄与以外にも家事や育児なども財産形成に貢献したと判断されます。
- ■共働きの場合
- 共働きの夫婦は、財産形成の貢献度は半々とされ、財産分与は50%ずつとなります。
原則として、夫婦の収入の差が、寄与度の差にはならないのですが、実働時間などに極端な差がある場合には、寄与度に応じて割合を決めていきます。 - ■専業主婦の場合
- 共働きの夫婦と比べると、家事労働の方が低く評価されてしまうようです。
判例の大半は20〜50%程度で、財産分与が50%になるには、不動産などの財産を購入したときに、妻も現金を出した場合などです。
また離婚時に妻が高齢な専業主婦だった場合など、扶養的な要因があるときには50%まで認められるケースもありますが、一般的には低くなります。 - ■夫婦で家業に従事する場合
- 共働き夫婦と同様に、財産形成の貢献度は半々とされ、財産分与は50%ずつとなります。
但し、事業の運営に一方の手腕が多い場合には、その寄与度に応じた割合となります。
婚姻期間別の財産分与の支払額等の統計は下記リンク先にてご確認ください。
※統計年報へのリンクをクリックすると新しいウィンドウでPDF形式の司法統計年報が表示されます。
※PDFファイルをご覧頂くには"Acrobat Reader"が必要です。"Acrobat Reader"をお持ちで無い方は、無料ダウンロードが可能です。
財産分与の請求期間
その期間を過ぎると請求できなくなります。
離婚成立後に請求することも可能ですが、できるだけ離婚前に解決するのが良いでしょう。
いったん離婚が成立した後では、相手も話し合いに応じてくれない場合もあり、財産分与の対象となる財産を散逸されたり、値切られたりする恐れがあります。
できるだけ早く請求して解決することが望ましいでしょう。
財産分与の税金
- ■支払う側の税金
- 財産分与を金銭で支払う場合には、支払う側に対する税金はありません。
財産分与を不動産や株式などで行う場合には、支払う側に譲渡所得が発生したとみなされ、譲渡所得として所得税と住民税が課税されます。
不動産を財産分与する場合、まず税務署に譲渡所得税などの税額を確認しておくことが重要です。
但し、離婚後に居住用不動産を財産分与する場合には、譲渡所得の特別控除3000万円が適用されます。 - ■受け取る側の税金
- 財産分与を金銭で受け取る場合には、受け取る側に対する税金はありません。
財産分与を不動産で受け取った場合、通常不動産取得税はかかりません。
但し、自分名義の財産にするためには、登録免許税など登記費用がかかります。
また、財産分与の額が、婚姻中に得た財産に対する寄与度や、その他一切の事情を考慮しても多すぎると判断された場合には、贈与税が課せられることもあります。
■関連項目
- 離婚に必要な手続きって?>>離婚の手続きと方法
- 子どもはどうなるの?>>親権・養育費・面接交渉権について
- 離婚協議書ってなに?>>離婚協議書とは/書式サンプル






